「前例がない」を強みに。P.I.C.S. × Questryがオリジナルアニメ『プリンセスぞのふ』で切り拓く、制作会社主導の新しいお金の流れ(後編)

#Interview #creative #finvestmentfund #Questry

P.I.C.S.で手掛けるプロジェクトや働くメンバーのバックグラウンドを掘り下げるP.I.C.S. CASE STUDY。

今回は、既存の製作委員会方式の課題に向き合い、ファンドを用いた新たな資金調達スキームで挑むグローバル向けオリジナルIP『プリンセスぞのふ』のプロジェクトにフォーカス。株式会社Questry CEOの伊部智信氏と、P.I.C.S. 代表取締役社長CEOの平賀大介、プロデューサーの土井陽絵。プロジェクトのキーパーソンである3人の対談を通じて、パイロットフィルムへのファイナンスを活用したオリジナル企画の立ち上げ方や、アニメーション業界に新たな変化をもたらすためのポイントを探ります。
後編では権利を自分たちで持てることが、映像制作業界にどんな変化をもたらすかを語ります。

制作会社が権利を持てるスキーム

――制作会社のP.I.C.S.から見て、伊部さんの構想した枠組みのどこに魅力を感じましたか?

平賀:パイロットは試作品ですから、それ自体はお金を生みづらいです。多くの場合は、 制作会社の持ち出しで、クリエイターとプロデューサーの熱意で頑張って作ることになります。我々も、数本程度なら頑張れると思いますが、リスクを全負担するので、続けていくとどこかで無理が生じます。だからといって、予算を削りすぎて、パイロットのクオリティが思ったほど上がらなかったりすると、企画の魅力を十分にアピールできないことにもなりかねません。伊部さんの提案内容は、うまくいった時に一方だけが得をするのではなく、投資側にも制作側にもフェアだと思いました。

――さらにこのスキームでは、制作会社が作品の権利を持てるようになるのですね。

平賀:そうですね。『プリンセスぞのふ』でやろうとしている展開の順番や広げ方は、既存のやり方ではなく、状況を見ながらフレキシブルに進めていきたいということだったので、製作委員会方式には合わないと思いました。

土井:去年のMIFAで感じたのは、動画コンテンツの展開って順番が決まっているんですよね。作って人気になったら物販やタイアップなどでマネタイズしていく。ヒットしないとこの順番をたどれない構造になっています。ヒットを前提とするためには原作があった方が有利なので、オリジナル企画は不利です。ですので、発想を逆にして、IPを作るための1つの出口として動画コンテンツを位置付け、初期からIPを360度展開するような構造にして、通常のアニメ制作とは違う順番で展開できないかと考えました。

――伊部さんはこの企画のポテンシャルをどう評価したのですか?

伊部:初めて土井さんから企画を伺った時、確かに日本よりも海外の方が受けそうだと思いました。IPの作り方や広げ方なども計算されていて、どの世代やコミュニティが反応するかということもきちんと丁寧に考えられている。もう1つは、日本の体験がテーマなので、協賛金が集まりやすそうだと思いました。しかも、製作委員会に参画していない企業が参加しやすいようにも設計されていて、そこが面白いなと。

土井:ありがとうございます。日本の日常そのものをIPとして、エンタメ領域に閉じず、コンビニや鉄道、商店街などあらゆる産業と接続していきたいと考えています。

――今後の展開について教えていただけますか?

土井:まずは、パイロットをMIFAをはじめとした海外マーケットに持っていき、交渉の材料にする営業キットとして使います。同時に、ウェブのショート動画を複数本作ろうと思います。ファンダム形成の起点としてはやはりSNSから、という構造を理解していただくためにもウェブ展開を実際にやるのが良いと思っています。参考にしているIPの一つはbilibili時代の『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』です。キャラクターの魅力を軸に、デジタル上で継続的に展開していく設計など、学ぶ点が多いと感じています。

「前例がない」と悩まないでほしい

――本企画によって、業界にどんな変化をもたらしたいですか?

伊部:金融の世界では、過去事例やトラックレコードを中心に会話することがほとんどです。しかし、エンタメの世界では、前例があるものはむしろ先行事例と比較されます。『オッドタクシー』も前例がなかったので苦労したという話がありましたが、金融的に「前例がないこと」をどうプラスの評価と考えられるか、現在試行錯誤をしています。既存の製作委員会方式で作る作品は、ある程度定型となり、作品の広げ方も国内の売上を基に値段をつけて、海外に売ることが多いと思いますが、この企画が成功して、直接海外にオリジナル企画を売りに行く人が増えてほしい。だから、前例がないことで悩まないでほしいんです。見たことないものだからこそ関心を示してくれる人は、きっといると思うんです。

土井:「こういうことをやってもいいんだ」という風通しの良さが伝わって、挑戦したいクリエイターやスタジオが増えてほしいと切に願っています。制作現場が構造的に持っている苦しみも痛いほどわかっているので、それを解決していくためにも、自己努力だけではなく、中長期で解決できる仕組みになってほしいです。

平賀:ついつい、決まりきった作り方や過去の勝ちパターンの方に流されてしまいますが、アート、舞台、漫画、小説、広告、音楽など様々なジャンルで活躍する作家の皆さんが、自由に枠を飛び越えて活躍できる場をプロデューサーが作れたら、刺激的で、面白い作品を世界に届けられるのではないかと思っています。伊部さんの「前例はないものに可能性を見出す」姿勢は我々の想いと一致していたんだなと嬉しくなりました。次につなげていくためにも、成功させたいですね。

文:杉本穂高 / 撮影:Moto Ishizuka

■Press Release- P.I.C.S.とQuestryがIPコンテンツの共同開発に関する業務提携を締結。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000448.000037973.html