今回のCASE STUDYでは、現在制作部で活躍するプロダクションマネージャー藤本さんと馬場さんの二人にフォーカス。在学時代、映像を専門に学んでいなかった2人が「映像の現場に関わる仕事」としてなぜプロダクションマネージャーを選び、どのように成長してきたのかを聞きました。
藤本早里 (3年目/プロダクションマネージャー)
入社年:2023年
出身地:大阪府
大学:関西大学
好きなこと:ドラマ・映画鑑賞
今までに関わった作品:風のよりみち、甲子園関連、SMBC、indigo la End、Omoinotake
馬場大樹 (2年目/プロダクションマネージャー)
入社年:2023年
出身地:神奈川県
大学:武蔵野大学
好きなこと:サッカー、写真を撮る
今までに関わった作品:ポカリスエット、MEGA BIG、FUJIFILM
ーー大学在学中はどのようなことを学んでいましたか?
馬場:僕は経営学を学んでいました。学生の時は特にやりたいことがなくて、とりあえず経営者の思想を学んでおけばなんとかなるかなと思って。
藤本:私も商学部だったので、経営とかマーケティングを勉強してて。映像・広告などのエンタメ系には興味があったので、映像の専門学校じゃないけど少しでも自分の好きなことに関われる可能性があるところに行きたかった、っていうのはありました。あと、大学のメインキャンパスで、関わる人も多くて、文理系問わず違う分野の人たちとも知り合える環境に身を置きたいっていうのは、大学・学部を選ぶ時に大事にしていました。
ーーなぜ制作会社に就職したいと思ったのでしょうか?
藤本:そもそも地元の4年制の大学に行ったのは、上京するハードルがかなり高かったこともあり、 エンタメに関わる夢を諦めよう、っていうつもりでもありました。初めは映像の専門学校にいかないと映像には関われないと思ってましたし…。
でも、就職活動で自己分析をしてみたら、やっぱり自分の好きなこと、映像とかエンタメ以外の業界にいる自分が全然想像つかなくて。それで、映像の知識がなくても映像に関われる仕事ってないよなーと思って調べていた中で、プロダクションマネージャーという仕事を見つけて。バイトの経験とか大学で勉強してきたことを活かせる映像との関わり方ってあるのかも、ということを知りました。
馬場:1社目で営業として働いてみて思いましたが、仕事って学校と違って長い期間関わるものじゃないですか。なので、自分が面白いとか楽しいと思えるような仕事がいいなって。それが何かと考えたときに、クリエイティブ系の仕事は毎回やることが違うし、影響力が目に見えてわかるものなので面白そうだし、退屈しない仕事だろうなと思って、制作会社に行こうと決めました。
ーー藤本さんは大学の就職活動で制作会社について調べていたと思いますが、社会人として転職してきた馬場さんは具体的な業務内容を知っていましたか?
馬場:いや、正直わからなかったです。大体の仕事内容は面接で初めて聞いて、ロケ地探し、お弁当発注など、デスクワークも意外と多いことを知りました。

ーー最初に任された業務はどんなものがありましたか?
馬場:僕は面接で言われた通り、ロケ地探しやお弁当発注からでした。ただ、案件の始まりから終わりまでの流れ、撮影の段取りについては全然わからなかったので、どこに参加していいのかっていうのは正直難しいところではあったんですけど、それは実際にやらないとわからないんで。
藤本:私は案件の途中から配属されました。確かポスプロ作業かオフライン試写くらいのタイミングで。なので、当時の先輩に、こういう時はこういうもの用意したらいいよ、とか、クライアントや担当プロデューサーの好きなドリンクを覚えたり、どういうことに気をつけるべきか、みたいな準備の仕方を最初に教えてもらいました。
作業でいうとフッテージ探しをやりました。監督のイメージに似た素材を探して…なかなか良いのが見つからなくて苦戦した覚えがあります。
ーー入社当時を振り返って、大変だったことはありますか?
藤本:Adobeソフト (Illusutrator, Premiereなど) の初歩的な操作を少しでも知ってたら、1回調べる手間もないから強かったなと思います。今でこそ、わからんことは調べたらいいだけやん!っていう気持ちではいられるけど(笑)。一番最初は資料作りでさえ、聞かないとうまくできなかったり、ちょっとでも役に立ちたいと思って頑張るけど、うまくできないもどかしさみたいなのは辛かったですね。
馬場:僕はMacの使い方がわからなかったです。今まで覚えてきたWindowsのショートカットが全て使えなくなったので、パソコンの操作が1番大変だったかったかもしれないです。
藤本:私は大学に入学した時に兄がMacのパソコンを買ってくれたんですけど「これから会社は全部Macになると思うから絶対にMac!」って言われてて、入社した時「ほら、Macやったやろ?」って言われました(笑)。
ーー専門的なことがわからない中でも少しずつ仕事がこなせていくようになる中、意識していたことはありましたか?
馬場:制作会社って人と関わる仕事じゃないですか。だから相手がどうしたいのか、どう感じるか、とか、相手の反応はすごく気にしていました。例えば、誰かが何かを探してたら、飲み物が欲しいのかなと推測して飲み物を渡してあげるとか、ホスピタリティの部分を最初は意識していました。
藤本:常に先輩の動きを見るようにして、先輩がやっていることは私がチーフの時やらないといけない仕事なんだ、ということや、私がチーフの立ち位置に入ってるけどプロデューサーが動いていたら、本当は私がやるべきことだったんだ…ということに、気づけなくて悔しいと思うようにしていました。プロデューサーに仕事を奪われないよう意識してたかな。
あとは、社内外問わず、早く藤本として覚えてもらいたいと思っていたので、キャラ作りじゃないですけど、元気な明るい後輩!みたいな目標とするイメージを1つ作っていたと思います。
馬場:この前新入社員が言ってた、外部スタッフの方の名前と、この人は何をやってる人かを最初に覚えるっていうの、すごくいいなと思いました。
ーー仕事をしていく中でつまづいたり、行き詰まった時はありましたか?
藤本:メンタル的につまずきそうになった時は、当時ついていたプロデューサーがちゃんと気づいてくれて。1人で辛すぎて、何も業務が回らなくなってしまいそうだった時に、その時私が担当していた案件をどれか1つに絞ることを提案してくれました。それ以降の大変な時は、仲のいい先輩が増えてきたこともあり、先輩に話を聞いてもらったりしています。
馬場:時間がない中で周りのスタッフさんに難しいお願いをする時は、相談の仕方を考えますね。先方にも負担のかかる交渉をすることでストレスを与えてしまうんじゃないかと悩むことで時間はかかりますが、結局は仕事だからやらなきゃいけないので、そういう時は上司に相談しながら進めています。どうしても難しい状況になってしまった時は、要望をそのまま伝えるのではなく、制作部で情報を整理することでスタッフさんの業務を簡素化できることがないか、という点は意識しています。
ーー学生時代や、前職の経験が活きた場面などはありますか?
馬場:前職の営業とは会話で伝える情報が全然違うと思いますが、先輩から「相手の気持ちを思って話すことが自然にできているね」って言われたことがありました。あとは、13年間サッカーをしているので、上下関係、チームに対してのリスペクトはしっかりするようにしてます。1人ではできない仕事なので。
藤本:撮影の日の夜、足の裏が痛くてどうにか立ってるみたいな時もあるので、体育会系の部活とかをやっていたら、フィジカルの面で役に立ちそうだなと思いますね。
私は予備校のバイトを3年くらいしてました。大学受験する学生さんを1年間見て、”合格のために何をここまでに終わらせない”といけないというスケジュールを組み立てて、その進捗確認するということをしていたので、全然分野は違うんですけど、”この案件だったら3ヶ月の中でどこまでに何を終わらないとダメなのか”みたいなスケジュール管理のスキルは役立っているのかもしれないです。
あとは本当に些細なこと、例えば子供の頃に好きだったこと、旅行に行った経験、そういうことの方が意外と仕事で役立ったり、スタッフさんや先輩と仲良くなる一つのきっかけになったことはありますね。
馬場:藤本さんが言った通りパーソナルな部分の方が仕事に役立ったりするのかなと。興味を持ったことが意外とするっと仕事に活かせることもある業界なので、面白いと思います。僕は周りよりサッカー選手に詳しかったことが活かされましたね(笑)。

ーー入社してから1番成長を実感できた瞬間はどんな時でしたか?
馬場:社外の人から評価してもらった時、少しはできるようになったのかなと思えます。人づてに「馬場くんの現場進行よかったね」って評価してもらった時とか。ありがとう、って言われるだけで感謝されてるのかなと思います。プロデューサーが現場に来れなかった時「馬場くんがいるなら大丈夫だね」と言っていただけた時が嬉しかったです。でも、まだ全然という気持ちです。
藤本:社外のスタッフさんに褒められた時は、自分の体感だけじゃなくて、人から見てもいい現場だったと思ってもらえる空気感を作れたんだ、と思えてすごい嬉しいですね。プロダクションマネージャーとしても経験値の高いプロデューサーから褒めてもらった言葉はめちゃめちゃ覚えてるし、重みも感じます。自分を少し肯定しても良いのかなって思わせてくれる言葉です。
ーー制作未経験から始めたからこその強みはあると思いますか?
馬場:特筆してよかったということはないんですけど、未経験だからと言ってマイナスになるとは思わないです。何事も最初はみんな未経験なんで、何事もやってみないとわからないですよ。
藤本:知識ゼロだからそこに対するプライドはないんで、学ぼう、やってみよう!みたいな気持ちでいられたのはよかったと思っています。変に知識を持っていると、なんかいけるんじゃないか、と思ってたかもしれないけど「何も分かりません!教えてください!」っていうテンションでいれたのは、知識のある人と比べたら強みだったかも。知識や経験がなくてもマイナスじゃないと思います。
ーー制作会社に入ってみて感じたギャップはありましたか?想像以上に大変だったこととか。
馬場:想像よりも考えることが圧倒的に多いな、とは思いました。ありとあらゆる可能性を考えて動かないとミスしてしまう。スタジオを1つ探すにしても、撮影の内容を考えながら探さないといけないし、ただ言われたことをやってるだけじゃどこかでボロが出ると思います。撮影にしてもいろんなパターンがあって、その全てを検証するために、いろんな方法での準備が必要だったりとか…前の仕事は道筋があって、そこから派生させていく仕事だったけど、今は道筋を作ることが仕事なので、そこは大きく違うなと思いました。ルーティーンワークじゃない仕事の考え方が身についてきたと思います。
藤本:データについての知識ですね。制作部が撮影データを管理して、ポストプロダクションに渡すのですが、この作業のためには何のデータが必要、ということをちゃんと知っていないと、伝えられるものもうまく伝えられないので。どういう風に、どのタイミングで伝えたら親切なのか、とかもありますね。
馬場:僕はグラフィックの案件が多いのですが、趣味で写真を撮るようになってから、カメラの設定やレンズによって映り方や印象がどう変わるかが自然とわかるようになりました。そのおかげで、撮影時に「広角レンズだと映る範囲が広いから、余計なものが入らないようにしよう」などと考えて動けるようになりましたし、カメラマンさんからも、ちゃんと理解しようとしてくれているな、と思ってもらえることが増えて、会話が広がったり仕事がしやすくなったりしています。いろんなことに興味を持つのはいいことだと思います。
ーー藤本さんは映像、グラフィックのチームを経験していて、馬場さんはグラフィックのチームに配属されていますよね。
藤本:広告、ドキュメンタリー、グラフィック、 MVを担当したことがあります。2年半で全部署経験しました。
P.I.C.S.の良さはカテゴリ関係なく全部やれるところだと聞いていて、自分もいろんなジャンルの案件ができるようになりたい、と入社の時から言っていたので、自分がやりたいことを叶えられる環境に異動させてもらえてるかなと思います。
馬場:0から世に出るものを生み出す仕事をやりたいなと思ってたので、媒体にはこだわっていませんでした。今はグラフィックのチームにいますが、1枚の画を作る中でいろんな表現の仕方があるので、それを色々なスタッフさんたちと作るのはすごい楽しいし、完パケとして公開された時に自分も見て、あ、すごいいいなと思えるのは、楽しいなと思います。
映像にも興味はあります!全然わからないので、また0からになりますけどね。また未経験からのスタートです(笑)。
藤本:グラフィックと映像だと案件の進め方が変わるので、私がどちらのチーフもやれることでプロデューサーが仕事を受けられる体制になるなら、それは自分の強みだなって思ってます。あとはいろんなチームを異動したことで何かあったら相談できる仲間を増やしていけたことはよかったなって思ってます。

ーー最後に、未来の仲間へのメッセージをお願いします。
藤本:知識ゼロでも大丈夫だけど、相当なガッツは必要だと思います。食らいつく力、辛い時には歯を食い縛ること。自分の味方になってくれる仲間たちを社内でも社外でも見つけられれば、不安なことも絶対に乗り越えられると思います。
あとは自分の好きなものをなんで好きなのか、ちゃんと言えた方が興味を持ってもらいやすいなと思うので、言語化できたらめっちゃ魅力的だなと思います。
って感じなんですけど、馬場さんはどうですか?(笑)
馬場:僕も本当に何も知らない状態で入社しましたけど、大丈夫!不安に感じることはどの会社でもあると思うんで、社会人になるということにちゃんと責任感を持っていさえすれば大丈夫です!
藤本:入社前にできることとして、(MVや映画などの)クレジットを見るのはめっちゃいいかもです。これ作るの大変だっただろうな、とか、これだけの人が関わってるんだ、とか、クレジットの文字1個ずつ確認した制作部がいたんだなーって思いながら。あとは、これどこだろう?ってロケ地を調べたりとか、これどうやってやったんだろう?とか、周りの人と比べたら変な着眼点だし、もうまっさらな気持ちで作品を見れないのはかわいそうとも思われそうですけど、制作部視点で作品の向こう側でどういうことが起きてるか、ということを想像して見てみると面白いと思います。制作部の仕事を楽しめるかな、って。
馬場:最初は経験者じゃないからわからないと思うけど、メイキングとかで撮影ってどんな感じなんだろうっていうのを見るのはいいかもしれないですね。

文:P.I.C.S./撮影:加藤雄太