「挑むことへの恐怖」を越えて。東宝× P.I.C.S.が次代の才能・関駿太監督と走り出すまで(後編)

#Interview #movie

P.I.C.S.で手掛けるプロジェクトや働くメンバーのバックグラウンドを掘り下げるP.I.C.S. CASE STUDY。

東宝による才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」から誕生したオムニバス映画『GEMNIBUS vol.2』。本作の一篇として制作された関駿太監督の『ソニックビート』は、カナダのファンタジア国際映画祭にも出品され、国境を越えて大きな反響を呼びました。

インタビュー後編では、西垣匠さん、山﨑天さん、戸塚純貴さんら魅力的なキャスト陣を迎えた撮影現場でのエピソードや、監督のビジョンを支え抜いたP.I.C.S.の制作体制、そして東宝の若手プロデューサー陣と築き上げた絆について語り合います。

関監督がプロとしての第一歩を踏み出した先に見据える、次なる挑戦とは――。引き続き、関監督、東宝の栢木琢也氏・橋本理央氏、P.I.C.S.のハン・サングン4名の座談会をお届けします。

GEMSTONE Creative Label・・・東宝の若手社員により立ち上げられた才能支援プロジェクト。フォーマットやメディア、これまでの実績を問わず、次代を担うクリエイターが自由に才能を発揮できる場を創出することを目的にしている。

GEMNIBUS・・・「GEMSTONE Creative Label」発の企画として、複数の新鋭監督による短編作品を一本の映画として編み上げるオムニバス映画。一昨年に公開された『vol.1』は連日満席・上映延長となる異例の大反響を呼んだ。

プロの現場と自主制作、面白さの違いとは

――本作は、西垣匠さん、山﨑天さん、戸塚純貴さんが主要キャストに名を連ねています。

:キャスティングに関しては、僕から提案せず、どうせ商業でやるなら業界経験のある方々にお任せしたいなと。プロデューサーの提案に対して、僕がどう演出できるかという感じで向き合いました。

栢木:西垣さんは、僕がプロデュースしたGEMSTONEの初期作品であるYoutube映画『チェンジ』で主役をやっていただいてるんです。彼はいわゆるイケメンな役をやることが多いんですけど、『チェンジ』ではヘタレな役をやってもらったら、それがすごくハマったんです。それで、関監督に「ヘタレ役がうまいんです」と提案しました。

短編映画『ソニックビート』より Ⓒ2026 TOHO CO., LTD. 

――戸塚さんや山﨑さんもハマってましたよね。

ハン:戸塚さんは良い役者ですよね。僕の新作で女優さんから戸塚さんの名前が上がったりします。売れっ子なのでスケジュール調整が上手くいくか心配でしたけど。

橋本:山﨑さんは、当時19歳でしたね。脚本を読んだ時から、ずっと山﨑さんの顔を浮かべていたので、「これもう絶対ハマりますよ」とお勧めしました。

:山﨑さん、演出しててめちゃくちゃ楽しかったです。ご自分の中のセオリーがこれから確立していく方だと思うのですが、演出すればするほど、どんどん変わっていくんです。しかも、明らかに映画が面白くなっていく。
自主制作って仲間とワイワイ作れるところが面白いんですけど、やっぱりプロとの仕事は、それとは全然違う面白さがありました。例えば、戸塚さんに「ここ、こうしてください」と、ちょっと言うだけで自分が想像してる何十倍も面白い演技をしてくれるんです。

ハン:関監督は初めてとは思えないぐらい、自分のビジョンを役者にもスタッフにもしっかり伝えられてました。今後も楽しみです。いつか、「俺、関さんのデビュー作やったんだよ」って自慢できるような大物になってくださいね。

――関監督はプロとしてこれが1本目ですが、P.I.C.S.と組んでみて、どうお感じになりましたか。

:初めて制作会社と一緒にやらせていただいたので比較はできないですが、P.I.C.S.さんだったからここまでできたんだろうなと、撮影中も撮影後もずっと感じてます。ちなみに、ラインプロデューサーの桐山優衣さんは、僕の大学の直属の先輩なんです。

ハン:わざとそういう風に組みました。「大学の頃の気持ちを感じながらやってね」って言って。

:そうだったんですね。皆さん、作品ファーストで考えてくれて監督としては本当にありがたかったです。もちろん予算の条件はあるんですけど、その中でP.I.C.S.さんはギリギリまで攻めてくれる。例えば脳内のシーンがありますけど、「ここは作品の核だと思うので、しっかり実現しましょう」と言ってくださり、僕がやりたかった画を実現させてくれました。最後まで「関さんのやりたいことをやりましょう」って言い続けてくれた、熱い制作会社です。

ここで生まれた絆には大きな意義がある

――初めてプロの現場で仕事する関監督を、どのように支えたのですか。

栢木:僕らが一番考えなきゃいけないのは、監督の次に繋がる一番いい選択を取れるかということです。今作はあくまでも「ホップ・ステップ」の「ホップ」だと思っているので。この作品を見た業界の人たちに、「この監督と組みたい」と言ってもらうためにはどうすればいいかという視点を、できるだけ関くんと共有するようにしていました。
ただ、商業主義的になりすぎると、関くんの持つケレン味やクリエイティビティが損なわれるかもしれない。そのバランスは意識しましたね。

橋本:僕は、初めてのプロデュース作品だったので、支えるというより、一緒に走るというイメージでした。悩んでることや困ったことは、お互いに共有して。一緒に映画を観に行ったり、ライブに行ったりとか。友達と言ったら変ですけど、一緒に作っていく仲間として、隣を走らせていただいたという印象です。

栢木:『GEMNIBUS』の最終的な目標は、本線と呼ばれる東宝の全国300館クラスの興行で活躍する監督を輩出することです。一方で、別の意義があるとするなら、今回で言えば、橋本と関くんが喧嘩もしながら絆みたいなものを築けたことだと思うんです。
世の中、コンテンツが増えて作り手の獲得競争になってるかもしれないですけど、ここで培った絆ほど強いものはないんじゃないかと僕は思ってて。2人が成長して出世した時、大作をこのタッグでやる、みたいなことがあるかもしれない。それが個人的には一番大きな意義かなっていう風に思ってます。

――優秀な監督が世に出るためには、相性のいいプロデューサーが必要ですしね。ところで橋本さんは、普段経理をされてるって聞いたんですけど。

橋本:そうなんです。こんな金髪ですけど経理です(笑)。GEMSTONEは、東宝の若手社員の有志で運営されているチームで、社内的にもこの企画はチャレンジングなものなんです。

栢木:プロデューサー志望でも、会社組織ですから経理部からスタートということもあるんです。作品作りへの思いもあるだろうし、社内の若手の挑戦の場所にもしたいと思っていました。

ハン:映画の世界で、劇場公開のステージまで上がるのってめちゃくちゃ大変なんです。そんな中、日本トップの東宝さんが、こういう機会を設けて、若い人々にチャンスを与えているのは、すごくいいことだと思います。
目先の結果だけじゃなく、栢木さんがおっしゃったように、20年後に輝く原石を見つけるために、とても重要な企画だと思いますから、これからも続けてほしいですね。

地球の裏側でも通用する作品とは

――本作は、カナダのファンタジア国際映画祭にも出品されたそうですね。海外の観客にはどう受け止められましたか。

:めちゃめちゃウケましたね。「ここウケたらいいな」と思ってた部分にもたくさん気づいてもらえました。1人が笑い出したら、みんなが探して気づき出して、劇場に笑いが広がっていくみたいな感じでした。
初めての海外上映でしたが、海を超えてもちゃんと同じように見てもらえることを実感できたことはすごくよかったです。

ハン:僕は外国人だから余計に感じるんですけど、変に海外を意識せずに日本らしく作った方がウケるんです。僕も前の作品で三味線をBGMにしてたんですけど、それが1番反応が良かった。
今回もチョロQや普通の日本の学校の部分などが、外国人から見て面白い部分なんだと思います。海外でも見られるものって、海外を真似したものじゃなくて、現地で自分たちが共感できるものなんです。

――海外にも行かれて、今後の活動に対してモチベーションが上がりましたか。

:上がりました。新潟の陸上競技場で感じた不安から生まれた作品が、言葉も違う、地球の裏側のカナダで爆笑しながら見てもらえるって、すごいことだと思いました。
高校時代に、文化祭で自分が作った映画を見せたんですけど、僕のことを好きな人も嫌いな人も関係なく、1つの場所で笑ってたんです。その時、映画の可能性みたいなのもを感じたんですけど、そういう原体験を思い出して、また映画を撮りたいなと思いました。

――これからみなさんは、どんなことに挑んでいきたいですか。

ハン:若い才能を応援することはもちろん、P.I.C.S.としては、ここでせっかくご縁もできたから、関さんと一緒に東宝さんの本戦での戦いに挑んでいきたいです。

栢木:東宝もやはり営利企業ですから、最終的にはこれを利益につなげないといけません。映画祭で評価された次は、商業的にチャレンジできる作品を関くんと一緒に成立させることが僕のミッションです。

橋本:僕は今回初めてプロデューサーをやらせていただいて、すごい楽しかったし、やりがいも感じたので、これからも作品作りに関わりたいというのが一番ですね。10年後、20年後、関さんやP.I.C.S.さんとまた作れたらいいなと本当に思っているので、一緒に成長していきたいです。

:監督としては、まだまだ反省点も多いので、もっと進化した姿を皆さんにも見せられるように今回の経験を活かしていきたいです。
栢木さんが言うように、映画は興行なので、将来的には地元の新潟のシネコンでも上映されるくらい多くの人に見てもらえる映画を作りたいですね。東京まで来られないおばあちゃんに僕の映画を映画館で観せたいです。

文:杉本穂高 / 撮影:Moto Ishizuka

◼︎ GEMNIBUS vol.2 – ソニックビート
https://gemstone.toho.co.jp/content/sonicbeat/
2026年3月6日(金)~3月13日(金) TOHOシネマズ 日比谷にて1週間限定公開

★好評につき公開延長・拡大が決定いたしました。
TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ なんば(3/19(木)まで)、kino cinema 新宿、kino cinema 立川高島屋S.C館、kino cinema 横浜みなとみらい、kino cinema 天神、kino cinema 心斎橋(以上3/20より)、kino cinema 心斎橋(3/27(金)より)

出演:西垣匠 山﨑天 (櫻坂46) 戸塚純貴
監督・脚本:関駿太
制作プロダクション:P.I.C.S.
製作:GEMSTONE Creative Label
© 2025 TOHO CO., LTD.